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“ペーパーレスで環境に優しい”だけのIT産業はもう時代遅れ!?

ITによってデータや資料を紙に印刷して保管・共有を行う必要がなくなり、ペーパーレスでエコな生活を送れるようになった。だが、この便利さも、「無」から生まれているわけではない。便利さと引き替えに新たな環境問題を引き起こしていることが注目されてきている。
ここで、米Facebookがユーザーがまだ1000万人程度だった2006年頃に起こした有名なエピソードを紹介したい。
当時、約200㎡のレンタルスペースに並ぶFacebook保有のサーバーがオーバーヒートする問題に直面した。そのとき、Facebookの技術責任者Jeffrey J. Rothschildは、スタッフとともに地元の家電量販店を巡って、あるだけの扇風機を買い求め、それを使ってサーバーが並ぶ室内の温度を下げて対応したという。
Facebookは今では約1億人のユーザーを持ち、8年前とは比較にならないほど膨大な数のサーバーが並ぶデータセンターを保有し、産業用の冷却システムを完備している。
一例としてFacebookを取り上げたが、そのFacebookの膨大なデータセンターですら、現在の情報時代を支える世界に何万とあるデータセンターの一つにしか過ぎない。世界中の人々が24時間、クリック一つでAmazonで商品を購入したり、メールにファイルを添付して送ったり、ニュースサイトを見ている間に膨大な量のデータがやりとりされている。
そして、IT産業の根幹にあるデータセンターが、実は大量の電力を浪費し、環境汚染に加担している事実が明らかになってきた。データセンターに関するニュースの頻度で見ても、The Wall Street JournalやCNNなどの主要なメディアでは、これまでは年に数える程であった関連ニュースが、最近では月約1回に増えてきている。

 記事によると、世界のデータセンターの消費電力は約300億W。これは原発約30基分の発電量に相当するといわれている。データセンターの大半は通常、需要に関係なく24時間フル稼働体制をとっている。
このため、需要が少なければ、結果として取り込んだ電力の90%を無駄にすることもあるそうだ。 マッキンゼーのデータセンターに関する調査によると、多くのデータセンターで実際にデータの処理に使われている電力は、消費電力のわずか6~12%で、残りは過激なデータの増量などに備えて、サーバーを“アイドリング”状態にしておくために使われている。さらに、データセンターは、停電に備えてディーゼル発電機を大量に備えている。この発電機は、たとえ停電がなくても頻繁に動作確認が行われ、そのたびに環境に有害な排気ガスを出している。 実際にIT産業が多く集まるシリコンバレーでは多くのデータセンターが州に作成する排ガス汚染施設一覧に名を連ねている。例えば、Facebookのデータセンターの消費電力は6000万W、Googleは約3億Wに上る。 また、バージニア州ではAmazonが、一部のディーゼル発電機を州の許可を取得しないで州内のデータセンターに設置し、繰り返し稼働させたとして約26万ドルの罰金を科せられた。

では、非効率的な電力消費が現実的に行われてしまうのはなぜだろうか? その大きな理由として、「顧客ニーズへの対応のため」ということが考えられる。 インターネットを前にした人は瞬時のアクセスとデータの送受信を求める。スムーズに情報の送受信ができることが、当然と考えられているので、たった一度の障害であってもビジネスの命取りになりうる。 このためデータセンターは過剰なバックアップ体制を敷くようになったと推察できる。 実際、大型データセンターの多くは、停電用のディーゼル発電機に加えて、フライホール発電機や鉛酸蓄電池も整備している。
また、技術の進化によって保存メディアの容量は大幅に増加しているが、生産されるデータの増加率の方がそれを上回る。多くの人は受信したメールも旅行の写真もクラウドなどのストレージに保存したままにしておく。クラウドストレージ会社EMCの調査によると、昨年世界で生産されたデジタルデータは、1兆8000億ギガバイトを超え、さらにこの1兆8000億ギガバイトのうち4分の3は一般消費者が生産したもので占められる。
私も含めて一般の消費者は、データを保管するには物理的な場所や電力が必要だという事実を意識せず、日々大量のデータをやりとりしているのではないか? 消費者がそのような事実を認識したとして、今のIT利用を行う際の姿勢が変化するのであろうか? 私は、実際のところ消費者がそのような事実を意識したといっても作成するファイルの容量を削減するようなことは考えにくいのではないか。 したがって、データセンターを発端とするITの発展に伴い発生する環境問題については、消費者よりも企業が主体となって解決していくべきだと考えられる。
 こうしたデータセンターを発端とする環境問題を調べていくことで感じたのは、そもそもデータセンターに関する実態を把握することすら難しいという実情である。データセンターには個人情報が補完されていることもあり、企業は通常その場所すら開示したがらないためと考えられる。また競争を理由に、採用している技術についても明かしたがらない。さらに、米国には業界を監視する政府機関がなく、連邦政府ですら自らのデータセンターの消費電力を把握できていない。

このような現状を受けて、もちろんデータセンターの効率を図っている企業もある。 Facebookはソフトやハード、冷却システムの改良を行い、Googleは新世代のデータセンターを構築し、効率化に努めているニュースも出ている。Appleはスカロライナ州に構築した最新のデータセンターにソーラーパネルを敷き詰めたり、オレゴン州の水力発電プロジェクトを買収するなど、グリーンエネルギーの導入に熱心に取り組んでいるニュースも出ている。 事業者が環境配慮よりも顧客ニーズへの対応などビジネスを優先させがちなことは否定できないが、 影響力のあるThe Wall Street Journal等のような主要メディアが、データセンターの環境問題を頻繁に取り上げていることを踏まえると、今後、米政府がIT業界にエネルギー効率を改善するように求める動きが出てくる可能性も十分にある。その可能性も考えると、環境汚染に関する問題を取扱うことが、今後のIT産業全体の発展を左右する重要な要素の1つになるのではないか。Appleなどの例に挙げたような最新技術の導入が難しい企業も含めて、データセンターの効率化など膨大な消費電力に関する大きな課題があることは間違いないといえるだろう。

※参照元
・David Kirkpatrick 「The Facebook Effect: The Inside Story of the Company」
・International Data Corporation「Power and Pollution(2012)」
・McKinsey & Company「Energy use by Data Centers(2013)」
・New York Time「Data Barns in a Farm Town, Gobbling Power and Flexing Muscle(2013.0212)」
・WORED jp「データセンターに巨大ソーラー・ファーム(2011.10.27)」、「自社のための「小水力発電ダム」を購入(2014.4.17)」

ミルキーウェイ 

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