久しぶりに男性ファッション誌GQを購入した。購入した動機は、美味しそうな鮨屋の特集があったことと、たまには視野を広げる意味でファッション誌にも目を通そうと思ったことだった。移動する電車の中で鮨屋の特集に一通り目を通した後、あらためてページをめくっていくと興味を引く記事に目が止まった。文筆家の甘糟りりこ氏のコラムで、近頃飲食店で気になる光景の一つに「飲食店に集う男子会」の存在があるらしく、それについて書かれていた。とある都心の和食店に、2-3人で座る数グループの男性達が目につく。それが接待である訳でもなく、ましてはゲイでもない、といった下りがあり、それを彼女は「これは男子会である」とした上で、『・・・男子会を楽しむ男性は、上から目線で文句ばかりのくせに財布に手をかけようとしない女や、「カワイー」しか語彙がなく、折角のご馳走の価値もわからない女には疲れてしまったのかもしれない・・・』と観察眼を働かせながら、こう続く『・・・女子会や男子会を好む人は、いつまでたっても大人になれないのではないだろうか。大人というのは、実際の年齢の事ではなく精神の成熟ことだ・・・』と。なるほど、精神的に成熟しない男女の集まりという見方には、一部共感できる。
「女子会・男子会」は「目的がない集会」というのが私なりの見方である。したがって組織的な活動ではないため、集まる事自体が目的化しやすい。大人になれないオトナによる「女子会・男子会」にも、何らかの意味はあるだろうからそのすべてを否定するつもりはない。
むしろ、ここで問題にしたいのは、「女子会・男子会」に群れてしまい、独りで自分と向き合って思考する時間をないがしろにしている事だ。
私たちは、学業や業績をあげるために、自分の能力を向上させようと考える。それは、自分で求めずとも、親、教師、上司に求められてきた。しかし、学業や業績を上げるために、精神的な成長を求められることは稀である。そうだとすると、現時点では自分で気づくしか方法がない。
では、自分で気づくためには、どうしたらいいのか。すぐにできることがあるとしたら、「女子会・男子会」の場で、ふと次のような事を自問してみてはどうかと思う。。
・この場に居て自分は何を得られるのだろう?
・この場で話す内容から、新しい自分の可能性を見いだせただろうか?
こんな自問から「女子会・男子会」に疑問を抱き始めたらチャンス到来だ。「女子会・男子会」を卒業できる。しかし、ただ卒業するだけでは駄目だ。直ちにやってもらいたい精神的成長を伴う大人への入学準備作業である。具体的には、自分の可能性を信じて、新しい何かや、ずっと気になっていたことに着手することがいい。そんなことを言われてもすぐには見つからないと思う人も多いだろうが、実は簡単にみつけることができる。
人は皆、事の大小を問わず、「したいことや、できたらいいのに」と思うことを考えている。
例えばこんなことだ。
①早起きして朝活で英語を勉強したいといつも思っている
②得意先の社長と対等に話したいと思っている
③上司に云いにくい事をきちんと伝えたいと思っている
これらの事を思っているのなら、あとは心に決めて変化を起こすだけだ。具体的には、こんなことが考えられる。
① → 朝5時に起きると決め、最初は営業の勉強の仕方を決めるとこから始める
② → 社長と議論すると決め、社長の関心時の情報を蓄え議論に備える
③ → 1か月後には伝えられる自分になると決め、必要なコミュニケーションスキルを習得する
やると決め、変化を起こす小さな行動を始めることができれば、ついさっきまでの自分から一歩前に進むことができ、昨日までの自分とは違う自分を実感でき、そこには明確に目的を持った行動が伴っている。また、行動は21日間続けてほしい、一日たりとも休んではいけない、連続21日というのが科学的にも意味がある数字だ。もし、21日間連続して実行でき、始める前と後で自分の感情や考え方に変化が表れていれば、習慣化され始めている証だ。そうなれば、次の段階へのステップアップもスムースになり、次の目標が見えてくる。
この一連の経験は、自らの決断で行った自己変革なのだと気づいてもらいたい。そこには、必ず目的があり、その目的のために行動し、行動した結果変化が表れる。単純なことかもしれないが、疑問を抱いたことから始まった新しい自分との出会いといえる。これが、よく言うところの小さな成功体験である。もちろんその過程では失敗体験もあるが、それも価値に変えればいい。(余談だが、京セラ創業者の稲盛氏は失敗経験がないそうだ。何故なら、成功するまで辞めないからというのがその答えであるからだ)
話の対象はわるが、4月から社会人になったみなさんにも、同様の事をやってもらいたい。仕事をする中で、苦手な事や、できれば避けたい事も出てくるだろう。しかし、これらの事と向き合って克服する経験は何にも代えがたい価値がある。指示を待つより自ら考え行動し、時には批判を恐れずに語り合うこともしてもらいたい。目的を持った思考と行動を重ねる事が価値ある大人への階段を昇る事につながる。
甘糟氏のコラムを拝読し、移動の車中で考えたた事を勢いに任せて筆を走らせてみた(否キーボードを叩いてみた)が、おかげで一つの結論に至った。「女子会・男子会」は居心地の良い無目的な集まりである。全面的に否定はしないが、そこに長居は無用である。精神的に成熟した大人への道に目を向け脱するべきだ。脱する道は、自らが気づき精神的成長への課題に取り組むことだ。そうすることで大人への脱皮がはかられる。
車窓から見える桜もすっかり満開だ。新入社員のスーツ姿も眩しいこの季節、彼らには少しでも早く大人への階段を元気よく駆け上ってもらいたい。
UZUKI
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