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「推し」が彩る毎日

 2021年の「日経リサーチ」の調査によると、Z世代の35.6%(3人に1人)が「推し活」をしており、「推し活」をしてみたいと思っている人は11.5%、「推し活」に興味がある人は13.1%と、全体の約6割が「推し活」に少なくとも何らかの関心を持っている。「推し活」をわかりやすく説明すると、ある特定のアーティストやキャラクターなどに熱狂的な支持を示すファンの活動のことだ。特に、Z世代やオタク文化がけん引してきたと言え、ここ最近現れた特別なことではなく、以前からアーティストに対する熱狂的なファンの存在はあり、追っかけなどの活動も認められていた。しかし、「推し」という一言には広い意味を持たせることが出来、所謂ファンの活動を現代の文化的文脈でとらえ直したとみる事ができる。「推し」は、他人に勧めたいほど気に入っているアーティストやキャラクターなどのことで、言葉の成り立ちを追うと「一推しのメンバー」➡「推しメン」➡「推し」に変化していったものだ。今では広義で「好きなもの/人」としても使われている。最近では「推しの子」という漫画がヒットし現在テレビアニメ化もされており、私たちの生活に「推し」は身近になっている。 

 

 ファンはなぜ「推し」を推すのか?「推し活」がもたらすメリットは何か?ファン心理やファンの行動を社会心理学的な観点から紐解いていこうと思う。 

 

 「推し」Aに対するファン心理75項目を8因子構造に分解したものが以下になる。 

1.『作品の評価』―「Aの作品のレベルは高いと思う」「Aの作品に感動した」など 

2.『疑似恋愛感情』―「気がつくといつもAのことを考えている」「Aに対する気持ちは、 

恋愛感情に近い」など 

3.『外見的魅力』―「Aの容姿はバランスがとれていると思う」「Aの外見は、私にとってとても魅力的だ」など 

4.『同一視・類似性』―「Aは私の気持ちを代弁してくれている」「Aは同じ世界にいると感じるから好きだ」など 

5.『ファン・コミュニケーション』―「Aのファンに出会うとうれしくなる」「Aの話題で友人と話を合わせることができる」など 

6.『流行への同調』―「Aが流行するようになってから好きになった」「マス・メディアなどでよく取り上げられているので、Aに興味を持った」

7.『尊敬.憧れ』―「将来、Aのようになりたい」「Aを尊敬している」など 

8.『流行への反発・独占』―「Aが有名になってしまうと嫌だと思う」「他にAのことを好きなファンがいると不愉快になる」など 

 これらのファン心理の8因子は、ファンであるAがアイドルなのか、ミュージシャンなのか、俳優なのか、スポーツ選手なのかなど職業カテゴリによって、各因子の割合には差が表れる。 

 

 さらに、「推し」Aに対するファン行動20項目を5因子に分解したものが以下だ。 

1.『情報収集』―「Aに関する情報は、 まめにチェックしている」「Aが出演するテレビ番組を必ず見る」など 

2.『熱狂行動』―「文具や小物など、Aのグッズを持ち歩いている」「Aの『追っかけ』をしている」など 

3.『作品の収集・鑑賞』―は「Aの作品(CD・本・ビデオなど)は、必ず買う」「暇さえあれば、Aの作品(音楽・本・演技・プレーなど)を見たり聴いたり読んだりしている」など 

4.『模倣行動』―「Aのファッションや作風を真似している」「Aと同じような言葉遣いや話し方になってきた」など 

5.『宣伝行動』―は「友達や家族に、AやAの作品のことを積極的に宣伝している」「お店にAに関するものがあれば、目立つように置きたくなる」など 

 これらのファン心理やファン行動をいずれかの因子で満たすことができていれば、それがその人にとっての「推し」を推す要素と判断できる。 

 

 このようなファン心理やファン行動に関連する社会心理学は、マーケティングの観点でも注目されている。ファンによる『作品の収集・鑑賞』では「推し」の作品が売れ、『尊敬・憧れ』や『模倣行動』によって「推し」がSNSで身に着けたファッションアイテムが売り切れてしまうこともある。 

 『宣伝行動』の例をK-POPで見てみると、ファンが「推し」の誕生日を祝うために、駅や街中に「バースデー広告」を出し、「推し」がその広告の前で写真を撮りSNSにアップする行為が見られる。このように、ファンは超優良顧客であると同時に、スポンサーであり、ファン・マーケティングを取り入れた戦略は、SNS社会において注目されている。その裏付けとも言えるデータの1つに、20代の推し活に使う金額を見ると、月平均で3~5万円と答えた割合が13.4%存在する。(株式会社ネオマーケティング調べ) 一方、K-popアイドルグループ「BTS」が2020年にリリースしたヒット曲「Dynamite」が韓国にもたらした経済効果は1,523億円とされており、その経済効果としてSNS社会における「推し活」がどれだけ押し上げているのか、そのデータを見つけることはできなかったが、「推し活」の相乗効果は大きかったことは想像に難くない。 

 

 世界的K-POPのガールズグループBLACKPINKのワールドツアー日本公演が東京ドームで開催された。彼女たちはK-POP三大事務所のうちの1つに所属し、7年ぶりのガールズグループのデビューとなり期待されており、さらに有名な先輩アーティストのMVに練習生時代から出演したり、広告に出たりと世界各国で注目されていた。音楽性だけでなく、ファッション・ルックス・ダンスなどでも評価されておりガールクラッシュ(同性にも衝撃を与えるほど魅力的な女性)として知られている。彼女たちのライブは2日間実施され、ファンクラブにも入っている熱狂的なファンは迷わず両日分のチケットを購入し、2日間のライブを満喫する。楽曲のセットリストなどのパフォーマンス内容は、両日とも同じである。同じアーティストの同じツアーに両日参加する熱狂的なファン心理を一般には理解し難いのかもしれない。しかし、「推し活」に興じる当人にとっては、同じ内容でも両日参加することはある意味当然である。「推し活」であれば、同じツアーの別日程でチケットを購入し遠征するし、同日に複数公演あれば1部2部両方参加することが熱狂的ファンの間では普通だ。ハイタッチなどの特典目当てで同じCDを何枚も買うこともある。「推し」を見つけた「推し活」初心者は、友人とライブへ行くものだが、回数を重ねるごとに「推し」のイベント会場でよく見る「推し活」友達も増え、SNS経由で「推し友」と繋がりライブへ一緒に行くような関係の広がりを見せ、「ライブに行くために毎日頑張ろう」とさえ思えるエネルギーの源泉にもなる。

 

 「推し活」は、ライブやMVなどのパフォーマンスなどによる「一時的な感動」だけではなくj「毎日の生活を彩り、様々なことを頑張る原動力」にすることができる。だからこそ明日もBLACKPINKを推していくのだ。

 

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参考: 

推し活に関する調査:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000343.000003149.html

ファン心理の構造(1)ファン心理とファン行動の分類:https://core.ac.uk/download/pdf/228733873.pdf 

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