梅雨が明け、今年もうだるような夏が始まる。そう考えると何故かうなぎが食べたくなる。そんな読者の方も多いのではなかろうか。今週の水曜日(7月24日)は土用丑の日だ。
「土用の丑の日」。この習慣を広めたのが平賀源内(1728-1780)であることは有名だ。江戸時代の発明家、医師、作家と、多才な彼は、マーケティング手腕にも優れ、日本初のコピーライターとも言える人物でもある。彼のキャッチコピーは、今もなお現代の人々に大きな影響を与えている。少なくとも私には「夏=うなぎ」が刷り込まれている。
江戸時代中期、夏場に売れ行きが落ちるうなぎ屋の主人が源内に相談した際、源内は「本日土用丑の日」と書いた看板を提案した。これは当時、夏の土用の期間中に訪れる丑の日に、身体に良い「う」のつく食べ物(梅干し・瓜・うどんなど)を食べる「食い養生」の風習を利用したものだ。それまで、味がこってりして、旬の時期からも外れた夏のうなぎはそれまで江戸の庶民に嫌煙されていたが、源内のキャッチコピーが話題を呼び、むしろ夏のスタミナ食として人々に認知され、売り上げを飛躍させた。土用の丑の日にうなぎを食べるという習慣を、現代に至るまでのもとしたこの源内のキャッチコピーの成功の背景には、以下の3つのセオリーがある。
❶シンプルさ
彼の「本日土用丑の日」というフレーズはシンプルで覚えやすく、人々の関心を引きつけ、季節と特定の食材を結びつけ、消費者に強い印象を与えた。
➋共感を生む内容:
源内のコピーは、誰もが共感できる内容であった。当時、夏場は食欲が落ちる季節であり、体力を保つためのスタミナ食が求められていた。源内はこれを巧みに利用し、うなぎの栄養価と健康効果を強調したこれにより、うなぎは夏の疲れを癒すスタミナ食として広まり「本日土用丑の日」という言葉は、当時の人々が経験していた夏の暑さや疲労への気持ちを理解していたからこそ、解決策として受け入れられた。
❸ユーモアと遊び心:
彼のメッセージは、消費者に楽しさと興味を提供するものであった。例えば、彼の看板やチラシにはしばしば絵やユーモラスな表現が使われ、消費者の記憶に強く残る工夫がされていて、これが人々の関心を引きつけた。
このセオリーは現代のキャッチコピーにも通じるところがある。例えば、Appleの「Think Different(違う考え方をしよう)」やNikeの「Just Do It(やってみよう)」は、シンプルで共感を生むフレーズの代表例だ。これらのキャッチコピーは、新しい視点を持つことや挑戦することの重要性を教えてくれる。
また、日本でのユーモアと遊び心を取り入れたキャッチコピーの例として、キリンビールの「一番搾り」の広告キャンペーンが挙げられる。「うまさ一番、キレ味一番。」というフレーズは、シンプルかつ覚えやすい。そして、広告では「一番搾り」の製法や味わいをユーモラスに紹介し、消費者に親しみやすさと興味を持たせている。これにより、消費者に対して製品の魅力を楽しく伝えることができる。
源内のこれらのセオリーは広告・マーケティングに携わる人だけではなく、日常生活の様々な場面でも応用可能だと私は考える。
❶シンプルさは、日常の様々な場面でも往々に役立つ。例えば、家事のルーチンをシンプルにすることで、時間の節約と効率化が図れる。「朝の10分掃除」や「週一断捨離」など、簡潔で覚えやすいルールを作ることで、家事が負担にならず、継続しやすくなる。
➋共感を生むメッセージや行動は日常にも重要だ。何か物事を進めるうえで共感を生むメッセージの発信は、活動を共にする仲間への働きかけに有効だ。また、家族や友人との会話で、相手の気持ちや状況に寄り添うことで、より深い絆を築くことができる。耳を傾け、共感することで、信頼関係を強化する一歩目とすることができるだろう。
❸ユーモアと遊び心を取り入れることで、日常はより豊かになる。例えば、職場でのコミュニケーションにユーモアを交えることで、リラックスした雰囲気を作り出し、チームの結束を強めることができる。例えば、「30分でどれだけ掃除できるかチャレンジ」や、「一日一新(毎日一つ新しいことを試す)」など、遊び心を持って取り組むことで、日常が楽しくなる。
源内のキャッチコピーのセオリーは、シンプルさ、共感、そして楽しさにある。彼の手法は、現代の多くのキャッチコピーにも通じる点が多くあった。そしてこれらのセオリーを日常での活用は、より効率的で豊かな営みの実現に力を貸してくれることだろう。
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